コンピューター囲碁の現在
昨年のちょうど今頃、
囲碁のAI、AlphaGoがトップ棋士の李世乭(イ・セドル)に五番勝負で勝ち越し、
囲碁界を震撼させました。
囲碁関連では珍しくニュースで大きく取り上げられたので、囲碁を打たない方でも多くの方が知っているでしょう。
井山さんが史上初7冠という快挙を成し遂げたことよりもよく知られていそうですね…
それくらい、元々世間の人工知能への関心が高かったのでしょう。
そもそも囲碁は、他のボードゲームよりも起こりうる局面の数が圧倒的に多く、コンピューターが一手ずつ調べていくことが事実上不可能ということで、囲碁AIの開発のために様々な工夫が施されてきました。
2006年にはモンテカルロ木探索というアルゴリズムを取り入れたCrazy Stoneというソフトが登場し、囲碁AIの世界に革命を起こしました。
これによりそれまで級位者レベルだった実力はアマ有段者まで一気に引き上げられました。
しかし、これを超える大革命がディープラーニングを用いたAlphaGoだったのです。
AlphaGoは2015年にAIで初めてプロ棋士を破り、続いて2016年に李世乭さん相手に4勝を挙げ、その名を世界に知らしめました。
さて、それから一年が経ち、AlphaGoの話題はあまり出なくなりました。
しかし、AIの発展がそれから再び行き詰まってしまったかというと、
全くそんなことはないのです!
年明けに囲碁サイト「東洋囲碁」や「野狐囲碁」で突如現れた「Master」というプレイヤー。
これらのサイトは世界のトップ棋士たちも多く利用していますが、
Masterはそのプロ棋士達をバタバタと倒していき、無敗のまま合計60以上の連勝を挙げました。
後に、MasterはAlphaGoに改良を加えたものと公式の発表がありましたが、
その成長は驚くべきものでした。
プロ棋士に勝てるようになったといってもまだやや不自然な手を打ったり、乱戦が苦手と言われていたAlphaGoでしたが、
Masterはそういった弱点を克服し、圧倒的な強さを見せたのです。
さらに、そうして得た正確な読みに裏付けられた新しい手がどんどん出てきました。
次々と新手を繰り出す様子は、故呉清源(ごせいげん)先生を思わせると言われます。
呉清源(1914-2014)
木谷実らとともに新布石、新定石を打ち出し、「21世紀の碁」を作った。
最近はその新手をプロ棋士たちが研究し、今までの常識をひっくり返す結論がたくさん出ています。
Masterはこれからの囲碁の発展に大きな寄与をすることになるでしょう。
楽しみです。